歴代7人の首相について、1日の最初の公務が何時に始まるかを集計した。平日の平均は最も早い菅義偉の7時37分から、最も遅い高市早苗の9時16分まで、約1時間40分の幅がある。
7人の平日平均
| 首相 | 平日数 | 開始時刻 | 公務時間 |
|---|---|---|---|
| 菅 義偉 | 266 | 7:37 | 11時間20分 |
| 野田 佳彦 | 338 | 7:59 | 11時間59分 |
| 石破 茂 | 250 | 8:06 | 12時間9分 |
| 菅 直人 | 122 | 8:13 | 12時間7分 |
| 安倍 晋三 | 1,844 | 8:28 | 11時間55分 |
| 岸田 文雄 | 701 | 8:36 | 11時間19分 |
| 高市 早苗 | 202 | 9:16 | 9時間50分 |
いずれも月〜金の平均で、外遊日(出発・帰国・滞在日)は除外した(詳細)。「公務時間」は公邸・私邸での滞在を除いた1日の合計活動時間を示す。
菅義偉と野田佳彦が7時台、残り4人が8時台に並び、高市早苗だけが9時台に離れている。高市早苗は9時16分で、次に遅い岸田文雄と40分の差がある。
ただし、早く始める首相が長く働くとは限らない。菅義偉は開始が最も早いが公務時間は最も短い。一方、石破茂と菅直人は12時間を超える。朝の開始時刻と1日の総量は別の指標だ。
開始時刻の分布
平均だけでは朝の姿は見えない。分布を比べると、首相ごとの違いがはっきりする。最も対照的な2人を並べた。
| 時間帯 | 菅 義偉 | 高市 早苗 |
|---|---|---|
| 8時前 | 88.3% | 10.4% |
| 8時台 | 4.1% | 35.1% |
| 9時台 | 1.1% | 20.8% |
| 10時以降 | 6.4% | 33.7% |
菅義偉の朝は驚くほど一定だ。266平日のうち235日が8時前。前回の記事で見たように、菅は在任中のほぼ全日を議員宿舎から官邸に通っており、通勤経路も朝の時刻もほとんど変わらない。
高市早苗にはそうした集中がなく、8時台・9時台・10時以降がそれぞれ2〜3割ずつを占める。10時30分以降に最初の公務が始まる日も4日に1日ある。他の5人はこの2人の間に分布する。
安倍晋三は在任約8年と長く、年による変化も見えた。最も早かった2014年の平日平均が7:42だったのに対し、新型コロナウイルス対応が長期化した最終年2020年は9:19と約1時間半遅くなっている。
閣議がある日は早い
7人に共通するリズムがある——金曜と火曜の朝が早い。
閣議は通常この2日の午前に開かれ、8時台前半に始まることが多い。首相はそれに先立って官邸に入るため、金曜と火曜は他の曜日より20〜30分早くなる。安倍晋三の場合、最も早い金曜が8:09、次いで火曜が8:18。月・水・木はいずれも8時半前後だ。
土日に公務がある日の開始はさらに遅く、菅義偉では日曜が11:45と金曜から4時間以上遅い。この「遅い休日」が平均にどう効くかが、次の話になる。
休日に働くほど平均は遅くなる
土日を含めた「全日平均」を見ると、興味深い逆転が起きる。休日に公務がある首相ほど、遅い休日の開始時刻が平均を押し上げてしまうのだ。
| 首相 | 平日平均 | 全日平均 | 差 | 休日出勤率 |
|---|---|---|---|---|
| 高市 早苗 | 9:16 | 9:23 | +7分 | 36.0% |
| 岸田 文雄 | 8:36 | 9:06 | +30分 | 72.6% |
| 菅 直人 | 8:13 | 8:49 | +36分 | 82.0% |
| 野田 佳彦 | 7:59 | 8:36 | +37分 | 80.4% |
| 安倍 晋三 | 8:28 | 9:06 | +38分 | 83.5% |
| 石破 茂 | 8:06 | 8:48 | +42分 | 82.7% |
| 菅 義偉 | 7:37 | 8:42 | +65分 | 90.9% |
菅義偉は休日の9割で公務を行っている。しかし休日は開始が遅いため、全日平均は65分押し上げられて8時42分になる。逆に高市早苗は休日出勤率が36%と低く、遅い休日の数値がほとんど平均に入らないため、全日平均は平日とほぼ変わらない。
全日平均だけを見れば、菅義偉の8:42と高市早苗の9:23の差は41分に縮まる。休日にも働いている首相がかえって遅く見えるという、平均値の落とし穴だ。本記事で平日のみの数値を主に用いたのはこのためだ。
データについて
「公務開始時刻」は、各日の動静記録のうち、公邸や私邸での滞在を除いた最初の活動が始まった時刻として集計した。
外遊日は集計から除外した。外遊の出発日や帰国日は、現地時間との時差の影響で深夜0時台の開始時刻が記録されることがあり、国内での「朝のリズム」とは性質が異なるためだ。具体的には、その日の最初の公務が海外で行われた日を外遊日と判定している。除外日数は安倍晋三が219日、岸田文雄が102日、石破茂が27日など、外遊の多い首相ほど影響が大きい。
公務記録がない日(外遊の中日、休日、データ欠損など)も集計から除外した。データの収録範囲と活動分類の方法は「サイトについて」を参照。