高市早苗は9月21日、第81回国連総会に出席するためニューヨークへ向かう。滞在中には一般討論演説と日米首脳会談が予定され、帰国は24日の見込みである。
就任は2025年10月21日。11か月で、今回が9回目の外遊にあたる。米国へは3月のワシントン訪問に続いて2度目になる。
首相は年にどれくらい海外にいるのか。9月下旬にニューヨークへ行くのは、毎年のことなのか。菅直人から高市早苗まで7人の首相について、5,659日分の動静から海外滞在の記録を拾い、外遊147回・653日を数えた。
歴代7人の外遊
対象は各首相の在任期間のうち動静を収録できた日。外遊1回は、日本を発った日から日本に着いた日までを暦日で数えている(詳細)。
| 首相 | 収録日数 | 外遊回数 | 海外日数 | 収録1年あたりの海外日数 | 1回の平均日数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 菅 直人 | 175 | 1 | 6 | 12.5 | 6.0 |
| 野田 佳彦 | 481 | 16 | 54 | 41.0 | 3.4 |
| 安倍 晋三 | 2,813 | 81 | 389 | 50.5 | 4.8 |
| 菅 義偉 | 383 | 4 | 17 | 16.2 | 4.3 |
| 岸田 文雄 | 1,088 | 29 | 126 | 42.3 | 4.3 |
| 石破 茂 | 385 | 8 | 31 | 29.4 | 3.9 |
| 高市 早苗 | 334 | 8 | 30 | 32.8 | 3.8 |
| 合計 | 5,659 | 147 | 653 | 42.1 | 4.4 |
在任順。「収録1年あたりの海外日数」は海外日数を収録日数で割って365日に換算した値で、収録日数の違いをならすための列である。
まず条件の違う2人を分けておく。菅直人の収録は2011年3月11日、東日本大震災の当日から始まり、175日分しかない。この期間の外遊は、5月のG8ドーヴィル・サミット(フランス)など1回だけである。菅義偉の在任(2020年9月〜2021年10月)は新型コロナウイルスの渡航制限と重なり、外遊は4回だった。表には2人の年あたりの数字も載せているが、以下の比較は残る5人で行う。
収録1年あたりの海外日数は、野田佳彦・安倍晋三・岸田文雄・石破茂・高市早苗の5人で、石破茂の29.4日から安倍晋三の50.5日までの幅にある。差は年21.1日、3週間ほどにあたる。
回数で見ると並び方が変わる。野田佳彦は年12.1回で5人中最多だが、1回の平均は3.4日と最も短い。安倍晋三は年10.5回で1回の平均は4.8日と最も長い。海外日数は回数と1回の長さの積であり、同じ日数でも組み合わせは違う。岸田文雄と野田佳彦はそれぞれ年42.3日・年41.0日とほぼ並ぶが、岸田文雄は少ない回数を長めの滞在で、野田佳彦は多い回数を短い滞在で積み上げている。
1回の長さ
147回の外遊を、日数で4つの区分に分けた。日数は出国日と帰国日を含む暦日の数である。
| 首相 | 1〜2日 | 3〜4日 | 5〜7日 | 8日以上 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 菅 直人 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 |
| 野田 佳彦 | 3 | 12 | 1 | 0 | 16 |
| 安倍 晋三 | 7 | 32 | 37 | 5 | 81 |
| 菅 義偉 | 0 | 3 | 1 | 0 | 4 |
| 岸田 文雄 | 6 | 11 | 10 | 2 | 29 |
| 石破 茂 | 1 | 6 | 0 | 1 | 8 |
| 高市 早苗 | 1 | 5 | 2 | 0 | 8 |
| 合計 | 18 | 69 | 52 | 8 | 147 |
在任期間内の全外遊。件数のみで、割合は付けていない。
147回の中央値は4日で、最も多い区分は3〜4日の69回である。
3〜4日の比重は首相ごとに違う。野田佳彦は16回のうち12回、石破茂は8回のうち6回、高市早苗は8回のうち5回が3〜4日に入る。安倍晋三は81回のうち32回、岸田文雄は29回のうち11回で、いずれも5〜7日の区分(安倍晋三37回、岸田文雄10回)と同程度である。
8日以上は8回あり、安倍晋三が5回、岸田文雄が2回、石破茂が1回。いずれも複数の国をまわる歴訪か、国際会議が続く日程である。最長は安倍晋三の2014年7月25日から8月4日までの11日間で、メキシコ、トリニダード・トバゴ、コロンビア、チリ、ブラジルの中南米5か国をまわった。岸田文雄の2022年4月29日から5月6日までの8日間はインドネシア、ベトナム、タイ、イタリア、バチカン、英国の6か国。石破茂の2024年11月14日から21日までの8日間は、ペルーのAPEC首脳会議とブラジルのG20サミットが続いた。
短い側の18回では、10回が韓国または中国への日程である。野田佳彦の2011年10月18日からの韓国訪問、岸田文雄の2023年5月7日からの韓国訪問、高市早苗の2026年5月19日からの韓国訪問は、いずれも日本を発って翌日に戻る日程だった。残る8回にはモンゴル、シンガポール、英国、ベルギーなどが入る。
いつ行くか
7人の記録をまとめ、暦月ごとに海外にいた日数を数えた。収録日数が月によって違うため、右端に収録100日あたりの海外日数を置いた。
| 月 | 海外日数 | 収録日数 | 収録100日あたりの海外日数 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 58 | 465 | 12.5 |
| 2月 | 17 | 421 | 4.0 |
| 3月 | 30 | 486 | 6.2 |
| 4月 | 55 | 479 | 11.5 |
| 5月 | 81 | 494 | 16.4 |
| 6月 | 56 | 480 | 11.7 |
| 7月 | 44 | 496 | 8.9 |
| 8月 | 29 | 495 | 5.9 |
| 9月 | 112 | 467 | 24.0 |
| 10月 | 47 | 462 | 10.2 |
| 11月 | 101 | 449 | 22.5 |
| 12月 | 23 | 465 | 4.9 |
7人の全記録をまとめた月別集計。年をまたぐ外遊は、その日が属する暦月に日数を振り分けている。
山は9月・11月・5月にある。9月は収録100日あたり24.0日で12か月の最多。国連総会が9月下旬に開かれるためである。11月は22.5日で、ASEAN関連首脳会議、APEC首脳会議、G20サミットがこの時期に集まる。5月は16.4日で、4月末から5月初めの連休中に外遊がある年が多い。野田佳彦の2012年、安倍晋三の2013年から2019年までの7年すべて、岸田文雄の2022年から2024年までの3年すべて、石破茂の2025年、高市早苗の2026年に、この時期の外遊がある。
谷は2月・12月・8月である。2月は4.0日で12か月の最少。予算委員会の審議が続く時期にあたる。9月の24.0日は、この2月の6.0倍である。2月に海外にいた記録があるのは安倍晋三(14日)と石破茂(3日)の2人だけで、他の4人は0日だった(菅直人には2月の収録がない)。8月の記事で見た8月の谷も、ここに重なる。
月ごとの山は首相によっても違う。安倍晋三は1月が47日あり、9月(71日)、11月(50日)に次ぐ。2014年1月にはオマーンなど中東・アフリカ4か国、ダボス会議(スイス)、インドと3回の外遊が入った。岸田文雄は5月と9月がともに21日で並ぶ。野田佳彦は11月が19日で、在任中の12か月で最も多い。
出発の時刻帯
出発の時刻帯にも違いがある。安倍晋三は81回のうち70回が9時から18時までの間に出発しており、全体の86%にあたる。18時以降の出発は4回、0時台から2時台の出発は0回だった。野田佳彦は16回のうち6回が18時以降。岸田文雄は29回のうち0時台から2時台の出発が4回、18時以降が3回ある。石破茂は8回のうち0時台が1回、18時以降が2回(残る1回は出発時刻が記録から取れない)。高市早苗は8回のうち6回が12時から18時の間に出発している。
9月のニューヨーク
9月の山の中身を年ごとに見る。国連総会の一般討論演説は毎年9月下旬にニューヨークの国連本部で開かれ、各国の首脳が集まる。
| 年 | 首相 | 日程 |
|---|---|---|
| 2011 | 野田 佳彦 | 9月20〜24日 |
| 2012 | 野田 佳彦 | 9月24〜27日 |
| 2013 | 安倍 晋三 | 9月23〜28日 |
| 2014 | 安倍 晋三 | 9月22〜27日 |
| 2015 | 安倍 晋三 | 9月26日〜10月2日 |
| 2016 | 安倍 晋三 | 9月18〜24日 |
| 2017 | 安倍 晋三 | 9月18〜22日 |
| 2018 | 安倍 晋三 | 9月23〜28日 |
| 2019 | 安倍 晋三 | 9月23〜28日 |
| 2020 | 菅 義偉 | なし |
| 2021 | 菅 義偉 | なし |
| 2022 | 岸田 文雄 | 9月20〜23日 |
| 2023 | 岸田 文雄 | 9月19〜22日 |
| 2024 | 岸田 文雄 | 9月21〜24日 |
| 2025 | 石破 茂 | 9月23〜25日 |
| 2026 | 高市 早苗 | 9月21〜24日(予定) |
「首相」はその年の9月下旬に在任していた首相。「日程」は出国日から帰国日まで。2015年の日程は10月にまたがる。
2011年から2025年までの15年のうち13年で、国連総会に合わせて9月下旬にニューヨークへ向かっている。行かなかったのは2020年と2021年の2年である。2020年の国連総会は各国首脳が現地に集まらず、オンラインでの演説に切り替わった。菅義偉の就任は9月16日で、最初の外遊は10月のベトナム・インドネシア訪問である。2021年は9月23日から26日まで米国を訪れているが、行き先はワシントンで、日米豪印首脳会合に出席している。
訪問先を国ごとに数えると、7人を通じて米国が最も多い。野田佳彦5回、安倍晋三16回、菅義偉2回、岸田文雄9回、石破茂2回、高市早苗1回で、今回の訪米が高市早苗の2回目になる。
訪れた国・地域の数は、外務省の一覧によると安倍晋三80、岸田文雄32、高市早苗10、石破茂10、野田佳彦10、菅義偉4。菅直人は収録が在任の一部にとどまるため、ここでは並べていない。
高市早苗の11か月
在任の長さが違う7人を、就任から334日——高市早苗の収録日数と同じ長さ——の窓で切りそろえる。この窓での外遊回数は安倍晋三13回、野田佳彦12回、高市早苗8回、岸田文雄7回、石破茂6回、菅義偉3回。海外日数は安倍晋三58日、野田佳彦39日、高市早苗30日、石破茂26日、岸田文雄25日、菅義偉13日になる。菅直人は就任から334日のうち収録があるのが一部にとどまるため、この比較から除いた。
高市早苗の8回の行き先は、外務省の一覧では次のようになる。2025年10月25〜27日のASEAN関連首脳会議(マレーシア)、10月30日〜11月1日のAPEC首脳会議(韓国)、11月21〜24日のG20ヨハネスブルグ・サミット(南アフリカ)、2026年3月18〜21日の米国訪問、5月1〜5日のベトナム及びオーストラリア訪問、5月19〜20日の韓国訪問、6月13〜18日の英国・イタリア訪問とG7エビアン・サミット出席、7月1〜3日のインド訪問。8回のうち4回はASEAN・APEC・G20・G7という多国間の首脳会議を含む日程で、残る4回は二国間の訪問にあたる。
最初の2回は就任直後に続く。就任4日後の10月25日にマレーシアへ発ち、27日に帰国、3日後の30日に韓国へ向かった。一方、2026年2月から4月にかけて海外にいたのは3月の4日だけで、この3か月の外遊は米国訪問の1回だった。
21日からの訪米は9回目の外遊にあたる。米国としては3月のワシントンに続く2度目で、9月下旬に首相が国連総会のためニューヨークへ向かう年としては、2011年以降で14年目になる。この期間の動静は、日々の更新で追っていく。
データについて
外遊1回は、首相動静に海外での滞在の記録が続いている期間とした。日数は、羽田などの空港を発った日から日本に着いた日までを暦日で数え、出国日と帰国日の両方を含む。日付が変わった直後の時間帯をまたぐ日程は、0時台に日本へ着いた日はその日を帰国日に含め、0時台の離陸が前日の記録として残っている場合は実際に離陸した日を出国日とした。
帰国せずに次の国へ移動した場合は、全体を1回と数える。外務省の一覧は発表の単位で分かれるため、同じ日程が2行になることがある(岸田文雄の2023年3月のインド訪問とウクライナ・ポーランド訪問)。逆に、いったん帰国して翌日に再び出発した場合は2回と数える(安倍晋三の2015年11月と2016年9月)。
国内で行われた首脳会談や電話会談、外国要人を迎える儀礼や晩さん会は外遊に含めない。給油のために着陸した国は訪問国に含めない。
外遊の回数は、収録範囲の中では7人とも外務省「総理大臣の外国訪問一覧」と一致する。岸田文雄は上記の理由で、本サイトの数え方では29回、一覧では30行になる。訪れた国・地域の数は、外務省の一覧の数字をそのまま使った。
制約: (1) 2011年から2014年までの収録元は書式が違い、出国日と帰国日の一部は原文の空港の記述から補った。(2) 岸田文雄の2023年11月18日(サンフランシスコでのAPEC首脳会議の帰路)は収録がなく、前後の記録から外遊日として数えた。(3) 外務省の一覧と日付が1日ずれる例が2件ある。安倍晋三の2013年5月27日は日本着が0時36分、岸田文雄の2022年3月24日は離陸が0時1分で、いずれも0時台をまたいだ日程にあたる。(4) 収録範囲は、菅直人が2011年3月11日以降、他の6人は在任の全期間である。
出典は首相動静(時事通信・朝日新聞・日本経済新聞)と、外務省「総理大臣の外国訪問一覧」。動静に載るのは記者が把握できた行動に限られる(終日居所の記事)。
収録範囲と分類方法は「サイトについて」を参照。