高市早苗は9月13日、木原稔官房長官と公邸で約3時間面会した。内閣改造を控えた協議とみられている。こうした政治日程に応じた面会がある一方で、高市の動静にもほぼ毎日繰り返し現れる名前がある。最も頻繁なのは市川恵一国家安全保障局長で、就任から213日間に179回。次いで原和也内閣情報官の124回。上位を安全保障と情報の官僚が占めるこの傾向は、高市だけのものではない。2013年にNSCが設置されて以降、どの首相でも面会頻度の上位には安全保障系の官僚がいる。
菅直人から高市早苗まで7人の首相について、29,456件の面会記録を処理し、約5万1千件の個別エントリに分けて数えた。
面会の概況
| 首相 | 在任日数 | 面会エントリ数 | 固有人物数 | 1日あたり |
|---|---|---|---|---|
| 菅 直人 | 163 | 1,561 | 479 | 9.6 |
| 野田 佳彦 | 395 | 3,177 | 964 | 8.0 |
| 安倍 晋三 | 2,063 | 23,823 | 5,036 | 11.5 |
| 菅 義偉 | 335 | 4,714 | 967 | 14.1 |
| 岸田 文雄 | 827 | 11,450 | 2,554 | 13.8 |
| 石破 茂 | 290 | 4,892 | 1,225 | 16.9 |
| 高市 早苗 | 213 | 1,911 | 711 | 9.0 |
「在任日数」は海外日程を除いた収録日数。「面会エントリ数」は退出記録・会議名の除外、複合記述の分割、表記揺れの統合を経た件数。「1日あたり」はエントリ数を在任日数で割った値。
1日あたりの面会回数は野田佳彦の8.0から石破茂の16.9まで幅がある。ただし、この差には記録の仕方と収録元の違いが含まれる。菅直人と野田佳彦の時期は退出記録(「○○氏出る」)が面会と同じカテゴリに混在しており、除外処理で菅直人506件、野田799件を取り除いた。石破茂以降の記録は複合記述(一行に複数の面会相手)が多く、分割後のエントリ数が膨らむ傾向がある。数字の単純な比較はできない。
最も頻繁に会う相手
首相ごとに、面会頻度の上位10人を並べる。名前の右のラベルは面会相手の役職タイプである(分類方法はデータについてを参照)。
菅 直人
| 順位 | 回数 | タイプ | 面会相手 |
|---|---|---|---|
| 1 | 121 | 官邸スタッフ | 福山官房副長官 |
| 2 | 74 | 官邸スタッフ | 枝野官房長官 |
| 3 | 50 | 官邸スタッフ | 細野首相補佐官 |
| 4 | 45 | 閣僚 | 海江田経産相 |
| 5 | 45 | 国会議員 | 民主党の寺田学衆院議員 |
| 6 | 37 | 党幹部 | 民主党の岡田幹事長 |
| 7 | 30 | 閣僚 | 北沢防衛相 |
| 8 | 26 | 閣僚 | 松本外相 |
| 9 | 25 | 官邸スタッフ | 仙谷官房副長官 |
| 10 | 24 | 安全保障 | 植松内閣情報官 |
菅直人の上位には閣僚が4人、党幹部が2人入り、政治家との面会の比重が7人の中で最も高い。5位の寺田学は閣僚でも官邸スタッフでもない無役の衆院議員で、公式の役職を持たない議員が上位10位に入るのは7人の中で菅直人だけである。収録期間の大半が東日本大震災後にあたり、寺田は官邸で首相の震災対応を補佐していた。
野田 佳彦
| 順位 | 回数 | タイプ | 面会相手 |
|---|---|---|---|
| 1 | 326 | 官邸スタッフ | 手塚首相補佐官 |
| 2 | 141 | 官邸スタッフ | 斎藤官房副長官 |
| 3 | 105 | 官邸スタッフ | 藤村官房長官 |
| 4 | 92 | 閣僚 | 岡田副総理 |
| 5 | 78 | 官邸スタッフ | 長島首相補佐官 |
| 6 | 71 | 官邸スタッフ | 長浜官房副長官 |
| 7 | 68 | 安全保障 | 北村内閣情報官 |
| 8 | 67 | 閣僚 | 古川国家戦略相 |
| 9 | 56 | 閣僚 | 玄葉外相 |
| 10 | 51 | 閣僚 | 枝野経産相 |
安倍 晋三
| 順位 | 回数 | タイプ | 面会相手 |
|---|---|---|---|
| 1 | 830 | 安全保障 | 北村滋内閣情報官 |
| 2 | 674 | 安全保障 | 谷内正太郎国家安全保障局長 |
| 3 | 541 | 官僚 | 秋葉剛男外務事務次官 |
| 4 | 471 | 安全保障 | 北村滋国家安全保障局長 |
| 5 | 359 | 官邸スタッフ | 今井尚哉首相補佐官 |
| 6 | 357 | 閣僚 | 麻生太郎副総理兼財務相 |
| 7 | 336 | 官邸スタッフ | 菅義偉官房長官 |
| 8 | 280 | 官邸スタッフ | 長谷川栄一首相補佐官 |
| 9 | 278 | 官邸スタッフ | 西村明宏官房副長官 |
| 10 | 278 | 官邸スタッフ | 岡田直樹官房副長官 |
安倍の上位4人のうち3人が安全保障・情報系である。北村滋は内閣情報官(830回)と国家安全保障局長(471回)の2つの役職で現れ、合わせて1,301回にのぼる。肩書きが変わった同一人物の統合は行っていない(データについて参照)。6位の麻生太郎副総理(357回)は全7人を通じて閣僚として最多の面会回数で、安倍政権の全期間にわたり副総理を務めた。
上位20位には河野克俊統合幕僚長(210回)も入る。自衛隊の制服組トップが上位20位に現れるのは安倍だけで、他の首相の記録にはない。また石川正一郎拉致問題対策本部事務局長が137回にのぼる。同ポストは菅義偉政権でも20回の面会があるが、安倍政権への集中が際立つ。
菅 義偉
| 順位 | 回数 | タイプ | 面会相手 |
|---|---|---|---|
| 1 | 335 | 官邸スタッフ | 和泉洋人首相補佐官 |
| 2 | 173 | 官邸スタッフ | 藤井健志官房副長官補 |
| 3 | 169 | 官僚 | 樽見英樹事務次官 |
| 4 | 151 | 官僚 | 吉田学内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室長 |
| 5 | 139 | 官僚 | 福島靖正医務技監 |
| 6 | 137 | 安全保障 | 北村滋国家安全保障局長 |
| 7 | 136 | 安全保障 | 滝沢裕昭内閣情報官 |
| 8 | 116 | 閣僚 | 西村康稔経済再生担当相 |
| 9 | 104 | 官邸スタッフ | 加藤勝信官房長官 |
| 10 | 75 | 官僚 | 秋葉剛男事務次官 |
菅義偉の上位には新型コロナウイルス対応に関わる官僚が集中している。3位の樽見英樹事務次官、4位の吉田学室長、5位の福島靖正医務技監を合わせると459回で、首相補佐官の和泉洋人(335回)を上回る。在任が2020年9月から2021年10月の約1年に限られ、その大半がパンデミック対応と重なった結果である。
岸田 文雄
| 順位 | 回数 | タイプ | 面会相手 |
|---|---|---|---|
| 1 | 698 | 安全保障 | 秋葉剛男国家安全保障局長 |
| 2 | 332 | 官邸スタッフ | 木原誠二官房副長官 |
| 3 | 312 | 安全保障 | 滝沢裕昭内閣情報官 |
| 4 | 278 | 官邸スタッフ | 栗生俊一官房副長官 |
| 5 | 256 | 官邸スタッフ | 磯崎仁彦官房副長官 |
| 6 | 219 | 官僚 | 森健良事務次官 |
| 7 | 217 | 官邸スタッフ | 村井英樹官房副長官 |
| 8 | 216 | 安全保障 | 原和也内閣情報官 |
| 9 | 196 | 官邸スタッフ | 森屋宏官房副長官 |
| 10 | 167 | 官邸スタッフ | 松野博一官房長官 |
岸田の上位は安全保障系(秋葉、滝沢、原)と官邸スタッフ(官房副長官4人)に二分される。官房副長官が4人現れるのは在任中に人事異動があったためで、いずれも在任期間に応じた回数になっている。
石破 茂
| 順位 | 回数 | タイプ | 面会相手 |
|---|---|---|---|
| 1 | 264 | 安全保障 | 岡野正敬国家安全保障局長 |
| 2 | 188 | 安全保障 | 原和也内閣情報官 |
| 3 | 163 | 官邸スタッフ | 橘慶一郎官房副長官 |
| 4 | 131 | 官邸スタッフ | 青木一彦官房副長官 |
| 5 | 130 | 官僚 | 鯰博行審議官 |
| 6 | 96 | 官邸スタッフ | 阪田渉官房副長官補 |
| 7 | 91 | 官僚 | 船越健裕事務次官 |
| 8 | 86 | 官僚 | 大和太郎防衛政策局長 |
| 9 | 85 | 官邸スタッフ | 林芳正官房長官 |
| 10 | 70 | 官僚 | 飯田祐二経済産業事務次官 |
石破の上位10人中4人が官僚で、閣僚はいない。上位に閣僚がいないのは7人の中で石破だけである(11位以下には赤沢亮正経済再生担当相が51回で入る)。
高市 早苗
| 順位 | 回数 | タイプ | 面会相手 |
|---|---|---|---|
| 1 | 179 | 安全保障 | 市川恵一国家安全保障局長 |
| 2 | 124 | 安全保障 | 原和也内閣情報官 |
| 3 | 72 | 閣僚 | 片山さつき財務相 |
| 4 | 68 | 官僚 | 船越健裕外務事務次官 |
| 5 | 43 | 官僚 | 金井正彰アジア大洋州局長 |
| 6 | 33 | 官邸スタッフ | 尾崎正直官房副長官 |
| 7 | 30 | 官僚 | 萬浪学防衛省防衛政策局長 |
| 8 | 28 | 官邸スタッフ | 木原稔官房長官 |
| 9 | 25 | 官邸スタッフ | 佐藤啓官房副長官 |
| 10 | 23 | 官僚 | 岩本桂一外務省中東アフリカ局長 |
高市の1位・2位は安全保障・情報系で、他の自民党政権と同じパターンが見える。一方、官房長官の木原稔が8位(28回)にとどまるのは、他の首相で官房長官が上位5位以内に入る傾向(菅直人2位、野田3位、安倍7位、菅義偉9位、岸田10位)と異なる。在任が短く全体の面会回数が少ないため、特定の相手に回数が集中しにくい可能性がある。
国家安全保障局長と内閣情報官の系譜
面会頻度の上位に繰り返し現れるポストがある。国家安全保障局長と内閣情報官は、政権を超えて首相との面会頻度が高い。
国家安全保障局長
国家安全保障局(NSS)は2013年12月に設置され、初代局長に谷内正太郎が就任した。NSS設置以降のすべての首相で、局長が面会頻度の上位3位以内に入っている。
| 局長 | 安倍 晋三 | 菅 義偉 | 岸田 文雄 | 石破 茂 | 高市 早苗 |
|---|---|---|---|---|---|
| 谷内 正太郎 | 674 | 1 | 1 | - | - |
| 北村 滋 | 471 | 137 | - | - | - |
| 秋葉 剛男 | - | 37 | 698 | 59 | - |
| 岡野 正敬 | - | - | - | 264 | - |
| 市川 恵一 | - | - | - | - | 179 |
谷内正太郎は安倍政権で674回、北村滋は安倍471回+菅義偉137回で608回、秋葉剛男は菅義偉37回+岸田698回+石破59回で794回。数字の大きさは在任期間の長さに対応しており、特定の首相と局長の関係の緊密さを示すものとは限らない。
菅直人と野田佳彦はNSS設置前であり、この表に現れない。NSC設置以前は安全保障に関する面会相手が分散しており、菅直人の上位10人に入る安全保障系は内閣情報官の植松(24回)のみである。
内閣情報官
| 情報官 | 菅 直人 | 野田 佳彦 | 安倍 晋三 | 菅 義偉 | 岸田 文雄 | 石破 茂 | 高市 早苗 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 植松 | 24 | - | - | - | - | - | - |
| 北村 滋 | - | 68 | 830 | - | - | - | - |
| 滝沢 裕昭 | - | - | 133 | 136 | 312 | - | - |
| 原 和也 | - | - | - | - | 216 | 188 | 124 |
内閣情報官は情報コミュニティの統括役であり、すべての首相で上位20位以内に入っている。北村滋は野田政権から安倍政権にかけて内閣情報官を務め、安倍との面会830回は全体最多である。その後、国家安全保障局長に転じた。
3つの政権にまたがる官僚
政権をまたいで面会頻度が高い人物もいる。藤井健志官房副長官補は安倍(54回)、菅義偉(173回)、岸田(161回)の3政権で上位に現れ、合計388回。同じく和泉洋人首相補佐官は安倍(206回)と菅義偉(335回)で計541回。これらは首相との個人的な関係ではなく、同じポストに長期間在任したことの反映である。
面会タイプの構成
面会相手を役職に基づいて11タイプに分類し、首相ごとの構成を見る。
| 首相 | 官邸スタッフ | 安全保障 | 閣僚 | 官僚 | 党幹部 | 国会議員 | 外国要人 | その他 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 菅 直人 | 19% | 3% | 22% | 15% | 9% | 10% | 2% | 20% |
| 野田 佳彦 | 25% | 4% | 20% | 17% | 6% | 3% | 5% | 20% |
| 安倍 晋三 | 15% | 11% | 12% | 35% | 3% | 2% | 5% | 17% |
| 菅 義偉 | 18% | 8% | 16% | 39% | 2% | 2% | 2% | 13% |
| 岸田 文雄 | 18% | 13% | 11% | 34% | 2% | 2% | 3% | 17% |
| 石破 茂 | 14% | 12% | 8% | 45% | 1% | 1% | 5% | 14% |
| 高市 早苗 | 7% | 19% | 12% | 28% | 3% | 4% | 6% | 21% |
「その他」は地方(知事・市長等)、財界(社長・会長等)、学術(教授等)、および分類できなかった面会相手をまとめたもの。
構成の違いは二方向に読める。
官僚の占める割合は菅直人の15%から石破茂の45%まで、3倍の幅がある。官僚の比率が高い首相は閣僚の比率が低く、菅直人と石破茂を比べると、官僚は15%対45%、閣僚は22%対8%で対照的になる。菅直人は閣僚と党幹部を合わせると31%、野田佳彦は26%で、自民党政権の安倍晋三(15%)や石破茂(9%)を上回る。
安全保障・情報の比率は、NSC設置以降の5人では8%から19%で、高市早苗が最も高い。ただし高市は在任が短く全体のエントリ数が少ないため、上位の安全保障系の面会が比率を押し上げやすい。
データについて
対象は菅直人から高市早苗まで7人の首相、在任期間内の収録日のうち海外日程を除いた面会記録29,456件。ソースの優先順位は時事通信(jiji/jiji_yahoo)、朝日新聞(asahi)、brownmorningの順で、日付ごとに最優先ソースを選んだ。
面会記録は首相動静のテキストから抽出した。退出記録(「○○氏出る」等)や会議名を除外し、一行に複数の相手が書かれている場合は役職名の境界で分割し、同一人物の略称(「北村内閣情報官」と「北村滋内閣情報官」等)を統合した。29,456件の元記録からこの処理を経て約5万1千件の個別エントリになった。1件が複数に増えるのは、1行に複数の面会相手が記載されているためである。
分類: 面会相手の役職名に基づき、官邸スタッフ(官房長官・副長官・秘書官・補佐官・参与等)、安全保障・情報(国家安全保障局・内閣情報官・危機管理監・統合幕僚長等)、閣僚(大臣・副大臣・政務官等)、官僚(事務次官・局長・審議官等)、党幹部(幹事長・政調会長等)、国会議員、外国要人、地方(知事・市長等)、財界(社長・会長等)、学術(教授等)、その他に分類した。
制約: (1) 同一人物が異なる肩書きで面会した場合、別のエントリとして数えている。たとえば秋葉剛男は外務審議官、外務事務次官、国家安全保障局長の3つの肩書きで現れるが、統合していない。(2) 肩書きのない人名(「斎藤」のような姓のみの記載)は役職タイプの分類ができず「その他」に入る。(3) 動静に載るのは番記者が把握できた面会に限られ、公邸や私邸での面会は記録されないことがある(終日居所の記事参照)。この条件は7人に共通する。(4) 2011〜2014年の収録分は退出記録が面会と同じカテゴリに含まれており、パターンマッチで除外したが、一部が残っている可能性がある。
収録範囲と分類方法は「サイトについて」を参照。