2026年8月11日、山の日。この日の首相動静は一行で終わっている——「終日、公邸で過ごす。」
13日は最初の公務が15時30分。国家安全保障局長らと10分間会い、その後に報道各社のインタビューが3分。14日はまた一行に戻る——「午前中は公邸で過ごす。午後も公邸で過ごす。」
8月の首相の一日とは、こういうものなのか。歴代7人の8月を集計すると、答えは半分だけ「はい」になる。8月は7人全員で公務時間が短くなる月だ。ただし、何がどう短くなるかは首相ごとに違う。
7人の8月
| 首相 | 収録した8月 | 公務時間(8月 / それ以外の月) | 公務記録がない日(8月 / それ以外の月) |
|---|---|---|---|
| 菅 直人 | 1回 | 9時間2分 / 11時間1分 | 12.9% / 5.6% |
| 野田 佳彦 | 1回 | 7時間39分 / 10時間22分 | 25.8% / 5.3% |
| 安倍 晋三 | 8回 | 9時間17分 / 11時間20分 | 5.2% / 2.7% |
| 菅 義偉 | 1回 | 8時間19分 / 9時間50分 | 3.2% / 0.9% |
| 岸田 文雄 | 3回 | 7時間58分 / 11時間1分 | 9.8% / 5.1% |
| 石破 茂 | 1回 | 8時間17分 / 11時間27分 | 6.5% / 4.2% |
| 高市 早苗 | 1回 | 5時間24分 / 8時間34分 | 29.0% / 17.8% |
在任順。「公務時間」は公邸・私邸での滞在と私的活動を除いた1日の合計で、移動を含む。外遊日を含む全日の平均である(詳細)。
8月が年間で最も公務時間の短い月なのは安倍晋三・岸田文雄・石破茂・高市早苗の4人。野田佳彦は1月(7時間34分)、菅義偉は5月(7時間26分)、菅直人は7月(8時間33分)が最も短く、この3人も8月が2番目にあたる。減り幅は菅義偉の1時間31分から、石破茂と高市早苗の3時間10分余りまで開く。
ただし収録した8月は安倍晋三の8回から1回までと差があり、8回分の平均と1回分の値を同じ重みでは読めない。
国会が閉じ、外交が空く
何が減っているのか。7人の記録をまとめ、月ごとに1日平均を出した。
| 月 | 国会 | 外遊 | 面会・会談 | 式典・行事 | 公務時間 | 記録なし |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2月 | 135分 | 40分 | 125分 | 7分 | 9時間47分 | 5.2% |
| 5月 | 48分 | 191分 | 144分 | 9分 | 11時間19分 | 4.5% |
| 8月 | 16分 | 70分 | 112分 | 19分 | 8時間33分 | 9.3% |
| 9月 | 19分 | 289分 | 110分 | 16分 | 11時間49分 | 4.2% |
| 11月 | 64分 | 252分 | 128分 | 18分 | 12時間10分 | 2.9% |
7人の全記録をまとめた1日平均。「記録なし」は公務記録がない日の割合。
8月の国会は16分で、12か月のうち最も短い。通常国会が閉会し、臨時国会にはまだ早い。外遊も70分で、9月と11月の首脳外交の季節にはさまれた谷間にあたる。首相ごとの平均をさらに平均し直しても——在任の長短の影響を除くため——8月の7時間59分が12か月で最も短い。
減らないものが一つある。式典・行事は8月が1日平均19分で、12か月のうち最も長い。6日の広島、9日の長崎、15日の全国戦没者追悼式が月の前半に固定されているためだ。
この3日は7人に共通する。広島の式典には、収録した16回の8月すべてで出席の記録がある。長崎は岸田文雄の2023年を除く全ての年で、その日の岸田は官邸での与党党首会談中、動静には「長崎への原爆投下時刻に合わせ黙とう」とある。8月15日は7人とも全国戦没者追悼式に出席し、多くの年はそれに先立って千鳥ケ淵戦没者墓苑で献花している。
前夜の宿泊先も重なる。岸田文雄を除く6人の8月6日の記録に、広島市南区のグランドプリンスホテル広島という同じ名前が現れる。岸田文雄はこの夜、同じ広島市南区の自宅に泊まっている。
差は平日ではなく休日に出る
8月を平日と土日祝に分けると、短くなる場所がはっきりする。
| 首相 | 平日の記録なし | 平日の公務時間 | 休日の記録なし | 休日の公務時間 |
|---|---|---|---|---|
| 菅 直人 | 2 / 23日 | 10時間37分 | 2 / 8日 | 4時間29分 |
| 野田 佳彦 | 2 / 23日 | 9時間44分 | 6 / 8日 | 1時間41分 |
| 安倍 晋三 | 3 / 173日 | 10時間11分 | 10 / 75日 | 7時間12分 |
| 菅 義偉 | 0 / 21日 | 10時間32分 | 1 / 10日 | 3時間38分 |
| 岸田 文雄 | 1 / 65日 | 9時間40分 | 8 / 27日 | 3時間52分 |
| 石破 茂 | 0 / 20日 | 10時間20分 | 2 / 11日 | 4時間33分 |
| 高市 早苗 | 1 / 20日 | 7時間22分 | 8 / 11日 | 1時間49分 |
8月のみ。「休日」は土日と山の日・振替休日(山の日は2016年以降)を指す。
平日で公務記録がない日は、安倍晋三が8年分173平日のうち3日、菅直人と野田佳彦が各2日、岸田文雄と高市早苗が各1日、菅義偉と石破茂は0日。7人とも0日から3日の範囲に収まり、平日の公務時間も7時間22分から10時間37分の間にある。
差は休日側に出る。野田佳彦の2012年は8月の休日8日のうち6日、高市早苗の2026年は11日のうち8日、岸田文雄は27日のうち8日、安倍晋三は75日のうち10日が、公務記録のない日だった。
ただし休日の過ごし方は8月に始まるものではない。8月以外の休日で公務記録がない割合は、菅義偉3.0%、安倍晋三8.2%、石破茂11.0%、岸田文雄15.8%、野田佳彦16.2%、菅直人16.7%、高市早苗58.8%。高市早苗の8月(72.7%)は年間の休日パターンの延長線上にあり、野田佳彦の8月(75.0%)は本人の年間16.2%からの開きが大きい。
盆の6日間(8月11〜16日)の1日平均も幅が広い。最も短いのは野田佳彦の2012年で1時間16分(6日中4日が記録なし)、次が高市早苗の2026年で1時間34分(同3日)。最も長いのは安倍晋三の2017年の11時間46分で、安倍の8年分48日のうち記録がないのは2020年の1日だけだった。
どこで夜を過ごすか
8月の過ごし方は、その首相がふだんどこに泊まっているかに従っている。宿泊先の違いは、8月に最も大きく開く。
| 首相 | 公邸 | 私邸 | 議員宿舎 | 別荘・ホテル・旅館 |
|---|---|---|---|---|
| 菅 直人 | 93.5% / 95.1% | 0.0% / 0.0% | 0.0% / 0.0% | 3.2% / 0.0% |
| 野田 佳彦 | 93.5% / 85.3% | 0.0% / 0.0% | 0.0% / 4.7% | 3.2% / 1.6% |
| 安倍 晋三 | 8.5% / 23.9% | 58.5% / 59.5% | 0.0% / 0.0% | 25.4% / 4.4% |
| 菅 義偉 | 3.2% / 1.1% | 0.0% / 0.0% | 93.5% / 94.6% | 3.2% / 0.0% |
| 岸田 文雄 | 90.2% / 82.3% | 3.3% / 0.1% | 0.0% / 6.3% | 3.3% / 1.2% |
| 石破 茂 | 83.9% / 63.8% | 0.0% / 0.3% | 3.2% / 22.3% | 12.9% / 4.8% |
| 高市 早苗 | 96.8% / 69.9% | 0.0% / 0.0% | 0.0% / 21.0% | 3.2% / 0.7% |
各セルは「8月 / それ以外の月」。海外での宿泊と判定不能の日を除いたため、合計は100%にならない。
私邸から通っていた安倍晋三は、8月も私邸が58.5%で他の月(59.5%)と変わらない。動くのは別荘だ。8月の宿泊の17.7%(44泊)が別荘で、他の月は1.7%(43泊)。2013年から2019年まで毎年8月中旬に山梨県の別荘に滞在し、2017年を除く6年ではそこを拠点とするゴルフの記録が続く。2013年8月18日は鳴沢村の鳴沢ゴルフ倶楽部で御手洗冨士夫キヤノン会長ら、2014年8月17日は富士河口湖町の富士桜カントリー倶楽部で榊原定征経団連会長らと回っている。
公邸に住む首相は逆の動きをする。8月はむしろ公邸に留まり、議員宿舎の利用が減る。石破茂の議員宿舎泊は他の月の22.3%から8月は3.2%へ、高市早苗は21.0%から0%へ。高市早苗の2026年8月は31泊のうち30泊が公邸だった。岸田文雄も82.3%から90.2%に上がる。
例外は短い滞在だ。岸田文雄は2022年8月17〜19日に静岡県伊豆の国市の旅館「三養荘」、2023年8月26日に那覇市のホテルに泊まった。石破茂は2025年8月20〜22日に横浜市のホテルへ3泊したが、記録は「滞在」「公務(内容未詳)」とあるだけだ。
菅義偉は8月も議員宿舎が93.5%で、他の月(94.6%)と変わらない。8月の私的な記録で最も多いのは「官邸の敷地内を散歩」で、14日分ある。高市早苗の8月の私的な記録は病院での検査や歯の治療など数件で、公邸以外に泊まったのは広島の式典前夜の1泊だけだった。
それぞれの8月
外遊が入る8月——安倍晋三の2016年8月は1日平均11時間47分、公務記録がない日は0日だった。21〜22日はブラジル・リオデジャネイロで五輪閉会式に出席し日本選手団と面会、26〜28日はケニアでギニア、セネガル、ウガンダなどの首脳との会談が続いた。2019年8月24〜26日にはフランス南西部のビアリッツでG7サミットに臨んでいる。
国会が残った8月——野田佳彦の2012年8月10日は、朝9時から参院消費増税関連特別委員会が開かれ、午後も衆院本会議が続いた。しかし翌11日から13日までの動静は、3日とも「終日、公邸で過ごす。」の一行だけになる。
最も短くなった8月——安倍晋三の2020年8月は1日平均5時間3分、公務記録がない日が5日、1時間未満の日が9日で、本人の8回の8月で最も短い。8月17日と24日に東京・信濃町の慶応大病院を受診し、28日に辞任を表明した。この1か月が8回分の平均9時間17分を押し下げている。岸田文雄も2024年8月14日、官邸での記者会見で総裁選への不出馬を表明している。
就任1年目の8月——高市早苗の2026年8月は1日平均5時間24分、公務記録がない日が9日。地方訪問は3回。3日は熊本地震の被災地を上空から視察し、氷川中学校の避難所を訪ねた。6日は広島、9日は長崎。10日と12日には熊本地震非常災害対策本部会議が開かれている。15日は千鳥ケ淵戦没者墓苑での献花と全国戦没者追悼式のみで、この日の公務時間は2時間10分だった。
9月に戻るもの
8月に空いた場所は、9月に埋まる。9月の外遊は1日平均289分で12か月の最多。公務時間は11時間49分と11月(12時間10分)に次いで長く、公務記録がない日は4.2%まで下がる。国連総会の季節にあたる。安倍晋三の9月は12時間46分で、本人の12か月で最も長い月だった。
例年、9月は臨時国会の召集と首脳外交で公務が戻る。高市早苗の9月がどうなるかは、本サイトで日々更新していく。
データについて
「公務時間」は、各日の時間配分のうち公邸・私邸での滞在、私的活動、分類できなかった時間を除いた合計として算出した。移動を含む。「公務記録がない日」はこの合計が0分の日で、動静に「終日、公邸で過ごす」とだけ記載された日がこれにあたる。
7人の8月で公務記録がない日のうち、原文に居所での滞在を示す語が含まれないのは安倍晋三の2日だけだった。2013年8月19日は河口湖美術館でコレクション展を鑑賞した日、8月31日は人間ドックの日で、いずれも私的活動として分類されている。解析の漏れによる0分ではない。
外遊日も集計に含めている。除外すると8月の1日平均は安倍晋三が8時間39分、岸田文雄が7時間17分になり、他の5人は8月に外遊日がなく変わらない。
収録した8月は安倍晋三が8回、岸田文雄が3回、他の5人は1回ずつ。菅直人の収録は2011年3月11日に始まり、9月は1日分しかないため最短月の比較から除いた。記録の行がないのは岸田文雄の2024年8月12日の1日で、集計から外れている。
宿泊先の分類は当日の最終所在地の記録に基づく。方法は宿泊先の記事と同じ。私的活動の区分には式典前後のホテル宿泊なども含まれるため、その分数は休みの多寡を測る指標としては使っていない。
朝の開始時刻と夜の終わりの記事は平日のみを対象にしたが、本記事は月単位の総量を見るため全日を集計した。データの収録範囲と分類方法は「サイトについて」を参照。